歌舞伎座の想い出

歌舞伎を上演する劇場といえば、まず思い浮かぶのは東京・東銀座にある歌舞伎座だと思います。現在では年間を通して歌舞伎を上演している唯一の劇場です。
現在の歌舞伎座は第五期ですが、私の記憶に多く残っているのは先代の第四期歌舞伎座です。第三期歌舞伎座が戦時中の空襲でほぼ焼失し、あれほどの豪華な建物では再建できないといわれていたのを、当時の松竹社長だった大谷竹次郎が執念で再建したとされ、1951年1月に復興開場、2010年4月の興業を最後に第五期への建て替えのため休館しています。

その長い歴史からすると、私が観てきた期間は短いですが、けっこういろいろな芝居を観たと思っています。昭和の歌舞伎で中心的な活躍していた俳優たちも何人か残っており、そこに平成の歌舞伎の中心となった人たちや当時の若手たちも台頭しはじめていた頃だったのだと思います。

しかし、なぜかこの歌舞伎座でよく覚えているのは、3階にあったカレーコーナーです。おそらくもとはバーとして営業していたのだと思いますが、カウンター席でカレーとコーヒーを出してくれるところでした。観劇は食事も楽しみのひとつとする人が多いのですが、私はあまり劇場でゆっくりと食事を楽しむ気持ちにならなかったので、折詰弁当を買っていくかカレーを食べるかが多かったからでしょう。今の歌舞伎座にはない、懐かしい風景です。

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